昨今、よく目や耳にすることが多くなった「生前葬」。その名の通り、本人が元気なうちに執り行う葬儀のことです。
- なんで生前葬をするの?
- いつするの?費用はいくら掛かるの?
- 普通の葬儀と何が違うの?
皆さんがお持ちのそんな疑問たちにお答えします!
生前葬とは
生前葬とは、本人が存命のうちに執り行う葬儀のことで、本人から、仲の良い友人・知人やお世話になった方々に直接、感謝の気持ちを伝える場、ということになります。
過去には、ビートたけしさんや桑田佳祐さん、アントニオ猪木さん、テリー伊藤さん、カンニング竹山さんなど、そうそうたる著名人の方々も生前葬を行っています。
生前葬の意味と行う目的
著名人の方の生前葬の中には、引退セレモニーのような形で執り行われるものも多くあります。さすがに一般の方では“引退”ということもなさそうですが、“社会的な生活や関わりに区切りをつける”という意味では、似たところがありそうです。
過去に生前葬を行った方々が、どんなきっかけで、またどんな目的で行ったか、その声をまとめてみました。
- 高齢になったので、友人や知人との関係性に一旦の区切りをつけたい
- 病気で余命宣告を受けた。死ぬ前に、会いたい人、感謝を伝えたい人がいる
- リタイアを機に海外に移住するため、その挨拶も兼ねて
- しんみりした葬儀ではなく、明るく楽しく「じゃあな」と言いたい
- 自分の死後、家族に迷惑をかけないためにも自分で自分の葬儀をしたい
生前葬の特徴
生前葬の特徴を挙げると、主に以下のようなものがあります。
- 宗旨宗派に関係なく、無宗教スタイルでOK
- オリジナル映像や余興などユニークなプログラムもOK
- パーティーや会食といった雰囲気を楽しめる
- 喪服の必要はなく平服でOK
無宗教スタイルで賑やかな雰囲気
葬儀の「葬」という文字が入ってはいるものの、内容は実にフランク。お経を読んだりといった宗教的なセレモニーは行われず、カラオケを歌ったり参列者による余興があったりと、賑やかで和やかな雰囲気で行われるのが定番のスタイルです。
生前葬の会場には、棺や祭壇を置かないのも特徴です(稀に、棺を用意して本人が中に入るといったパフォーマンスがあることも)。その代わりに、本人の人生を振り返るパネルを用意したりアイテムを陳列したりと、自由に演出することができるのです。
生前葬とはつまり、“お葬式”というよりも“パーティー”“宴会”といった趣旨が強い、と考えて良いでしょう。
生前葬を行うには
ここからは、生前葬を行うために具体的に必要になるコト・モノについて解説していきます。
事前に準備すること
生前葬を開催するにあたって決めなければならないのは主に以下のようなことです。
- 会場・会食内容
- 招待する人・数
- 生前葬の内容・演出
会場・会食内容
生前葬の会場として選ばれることが多いのは、実際の葬儀が行われるセレモニーホールをはじめ、ホテルや会館、レストラン、自宅などです。多くの知人や友人を招待する場合は、それに応じた広い式場を確保しなければなりません。
招待する人・数
生前葬に招待するのは、仕事上お世話になった方や趣味・サークルで会った友人、学生時代の友人などが多いです。招待する際は、各人に案内状を郵送するのをお忘れなく。
生前葬の内容・演出
生前葬の多くは無宗教スタイルです。ただし、宗教者の了解を取れれば仏式など宗教に則った葬儀も可能ですが、いずれにせよ本人の希望を反映できます。
開式の言葉の後、本人のこれまでの軌跡を写真のスライドなど映像演出、弔辞として友人代表によるスピーチや余興、会食で構成されるのが一般的です。
その内容は、葬儀というよりも結婚披露宴に近く、主人公の希望・理想を100%反映させられます。
生前葬当日の流れ(式次第)
一般的な生前葬の流れは以下のような感じです。
- 開式の言葉
- 本人の挨拶
- 本人のこれまでの自分史の紹介
- 来賓の挨拶
- 会食・歓談
- 親しい知人・友人からの言葉
- 余興など
- 閉式
あくまで一例なので、絶対にこの通りに進行する、というものではありません。順番を入れ替えたり、余興の数を増やしたり…と、本人の希望を反映させた式次第にできます。
生前葬の費用相場
生前葬の費用を考えるとき、検討材料にしたいのは以下の3点です。
- 会場使用料
- 飲食・返礼品費用
- 演出費用
会場使用料は規模や種類によって異なり、レストランや宴会場で小規模(10人~程度)で行うのであれば5万円~、中規模(30人~程度)であれば20万円~、といった感じでしょうか。
一方、高級ホテルで開催するような場合は、この3~4倍は見積もっておいた方が無難です。
飲食・返礼品費用は、一人あたり1万円前後が相場でしょう。もちろん、飲食や返礼品のグレードが高くなるほど費用は高くなっていきます。
演出も趣向を凝らすほど費用は高くなりますし、例えば「カラオケだけ」程度であれば安く抑えることも可能です。
生前葬のメリット
生前葬を執り行うには、次のようなメリットがあります。
- 自分で自由に楽しくできる
- 時間的制約がない
- 家族への負担を軽減できる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
自分で自由に楽しくできる
生前葬のメリットは、なんといっても生きているうちに本人が自ら周囲の人に感謝を伝えられることです。
当然ですが、逝去後の葬儀では自分はもう亡くなっているため、親族や参列者に対して直接的に思いを伝えることはできません。しかし生前葬であれば、普段からお世話になっている方に直接、感謝の気持ちを伝えることができるのです。
時間的制約がない
生前葬は、スケジュールさえも自分の希望を優先させられます。1ヵ月後でも3ヵ月後でも、1年後でもOKなのです。
それだけ時間の余裕があれば考えを整理することもできますし、理想を叶えるための準備の時間も十分に取ることができます。
家族への負担が軽減
生前に葬儀を行って、逝去後の葬儀はごく簡易なもの(例えば火葬式など)にする方も多いです。
そういった流れにして、残された家族が喪主となって開催する葬儀の負担は最小限に抑えられるのも、生前葬の大きなメリットのひとつです。
生前葬のデメリット・注意点
メリットがある反面、もちろん生前葬にはデメリットもありますし、開催にあたっての注意点もあります。それが以下のようなこと。
- 自分本意になりがち
- 理解を得られるのが難い
- 二度手間になる
どういったことか、具体的に見ていきましょう。
自分本意になりがち
生前葬のメリットとして「自分の希望を叶えられる」というものがありますが、これを履き違えて自分本位な内容で開催するのはNGです。
生前葬はあくまで、「あくまでお世話になった方々に感謝の気持ちを伝えたり、お別れの挨拶をすること」です。参列者も含めて充実した時間にするための内容にする、ということは前提として考えておきたいところです。
家族や周囲の理解を得るのが難しい
本人が希望していても、執り行うには費用もかかるため、家族が承諾しない場合があります。生前葬は一般的な葬儀と同じく、家族の協力がなければ執り行えません。生前葬を行うのであれば、まずは家族にその理由や目的を理解してもらうことが大事です。
また、認識が高まってきたとはいえ、すべての人が生前葬について理解しているとは言えません。
本人が存命中に葬儀を行うということに矛盾や疑問を感じる方も一定数いるため、生前葬の趣旨・目的を理解してもらうために連絡を取ってみたり、また案内状に説明を追記するなどの工夫も必要です。
二度手間になる
メリットの項でも触れましたが、生前葬を執り行ったとしても、逝去後には、たとえ簡易的にでも葬儀も執り行うのが一般的です。つまり、形は違えど「葬儀を2回、執り行う」ということになるので、家族など近しい関係の人にとっては二度手間になることに変わりはありません。
そのあたりのことも踏まえて、家族や近しい知人・友人に理解を求めることは必要不可欠と言えるでしょう。