依頼人・羽月五郎氏からのリクエスト
(今回の依頼人プロフィール)
氏名:羽月五郎
年齢:78歳
住所:東京都在住
家族構成:妻(70歳)、長女(50歳)、次女(48歳)、孫3人
羽月五郎氏:人生に後悔はないって? いやぁ、ふたりの娘も立派に育って孫の顔も見せてくれたし、妻も地域の子どもたちに書道を教えたりしていまだに元気だし(ボランティアですけどね)、満足と言えば満足な人生なんでしょう。でも、後悔がまったくない、といったら嘘になります。地球に生きている霊長類なら、みんなそうでしょう。
あのー、宇宙サークルって、知ってますか? インターネットもない、まだパソコン通信しかなかった時代ですが、宇宙オタクが集まって交流する場があって、私は初期の頃からそれに参加しているんですよ。天体観測からはじまって、今では衛星開発とか、ロボットやAIの技術を研究したりしています。
2000年代になって、JAXAの職員や機械メーカーのエンジニアなんかもメンバーに入ってきたから、そこそこの成果を挙げたりしているんです。ただねぇ、私は理系の大学に行ったわけでもないし、30代で家業を継がざるを得なくなって今は老舗豆腐屋の三代目店主ですから、年に2~3回の集まりに顔を出しても、私みたいな趣味でやってるだけの宇宙オタクは肩身が狭いんですよ。
とはいえ、サークルでは古参というだけで幹事長だとか、事務局長をつとめてきただけに、生きているうちに彼ら仲間たちをギャフンと言わせられるようなイベント、そう、生前葬をやってみたいと思っているんですよ。
そもそも、生前葬とは
生前葬ってなに?
かつては、「お世話になった人たちにお別れを言うため、本人が生きている間におこなうプレ葬儀」の総称でした。現在は、元気なうちに「人生に区切りをつけるお祝いの儀式」としておこなうケースが増えています。意味合いは、誕生日会や長寿のお祝い(喜寿や米寿など)と似ています。宗派・宗旨に関わらず自由なスタイルで開催できる点が魅力です。
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生前葬をするメリットは?
生前葬は、これまでの人生を振り返ることで、負の感情や記憶をリセットし、それからの人生をより生き生きとしたものに変えるきっかけになります。自分が主役になって、普段聞けない感謝の言葉や褒め言葉・お祝いのメッセージをもらうことで、自己肯定感を高めることができたと感じられた方もいらっしゃいます。
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基本プラン──「プラネタリウムBAR」でのプライベート生前葬 星空に抱かれて宇宙カクテルパーティ
生前葬コーディネイターの余生充実郎です。まずは羽月様のご希望(潜在意識下のご希望も含め)を把握、検討した上で、基本プランから紹介させていただきます。
会場は、港区白金台にある「プラネタリウムBAR」 になります。この店では、宇宙オタクを自称される羽月様には説明不要だと存じますが、プラネタリウムクリエイターの第一人者、大平貴之氏製作の2台の「Megastar」機で、店内に600万個の星空を映し出すことができるのです。
日時と場所を指定すれば、その日の星空を再現することができますので、羽月様が誕生した日の星座を設定してはいかがでしょう?
メイン機種となる「メガスターゼロ改造機」は500万の星を映し出します。/2022年4月に導入した8Kレーザープロジェクターを使用した新型デジタルプラネタリウム。圧倒的に鮮明で綺麗な映像をドーム型スクリーンに映し出します。
もうひとつ、このお店の目玉は、惑星をイメージしたプラネットカクテル(1320円)です。グラスの上に球形の泡がのっていて、金星、火星、木星などの惑星を表現しているのです。非常にインスタ映えするカクテルです。
プラネタリウムBARオリジナルカクテル。惑星をイメージした泡が載っているインスタ映えするカクテルです。
羽月様が所属する宇宙好きなサークル仲間のみなさんにとって、ここは夢のような場所であることは間違いありません。
生前葬ですから、主役の羽月様を立てる演出も必要です。まずは、会場の一角に「羽月コレクションブース」を設け、羽月様がこれまで愛用してきた歴代の天体望遠鏡を観測データも添えて展示。
また、これまでの羽月様の業績を記したスライド映像をつねにプロジェクターで映写し、羽月様選曲による富田勲・シンセサイザー編曲のホルスト『惑星』をエンドレスで流し続けます。
それから「宇宙服を棺に見立てて、着脱パフォーマンス」というのはいかがでしょう? 宇宙服というのは、グローブやブーツ、上下ユニットなどの着用に独特な方法がございます。
式の終盤、司会者の「御入棺です」との合図で宇宙服を着用。羽月様のスピーチの後、「御出棺です」の合図で退場するという趣向です。仲間たちをギャフンと言わせたいとの羽月様のご希望にピッタリの演出かと思います。
「基本コース」予算お見積り
(会場費)
月曜日から金曜日…1時間:5,500円
土・日・祝日…1時間:1万1,000円
(飲食費)
2時間飲み放題・ビュッフェ付き…お一人様7,700円
お店の最大収容人数の30名様を集めることとして計算します。平日開催の場合は、24万2,000円。土・日・祝日開催の場合は、25万3,000円。お一人様につき、8,000~9,000円の会費をいただければ、ほぼトントンの予算を確保できる計算になります。なお、「宇宙服着脱パフォーマンス」を取り入れる場合は、宇宙服のレンタル料(3万~25万円)が別途かかります。
──以上、基本コースのお見積りでした。
生前葬 ワンポイント♡アドバイス
生前葬は、通夜や告別式と違い、宗旨・宗派による縛りや、守るべき形式やルールなどがありません。すべては主役の思うがまま、好きに企画することができる自由度の高さが魅力です。生前葬をやるときは、誰でもワガママになっていいってことなんです。
オプションA──「スペースバルーン」による宇宙体験つき “昇天”目線で会葬者にメッセージ
オプションAは、生前葬での羽月様を主役として盛り立てる演出に特化したものになります。羽月様に生きたまま“昇天”していただき、空の上から会葬者の皆様にメッセージを送っていただく、という趣向です。
米国フロリダにある宇宙ベンチャー企業Space Perspective社は、気球型宇宙船「スペースシップ・ネプチューン」を用いた、高度約30kmの「宇宙の入り口」への旅行体験を提供しています。
忘れられない6時間となるでしょう。
提供:Space Perspective
バルーンに固定されているスペースラウンジの定員は8名様。室内は十分に加圧されておりますので、身体への負荷はほとんどございません。従って、飛行前のトレーニングや特別な訓練は必要ないのです。ラウンジ内には祝杯を挙げるためのバーカウンターがあり、自由に立ったり移動したりできる十分なスペースがあります。
「WI-FI完備」というのも重要なポイントです。なぜなら、船内から地上の生前葬会場に出席している会葬者の皆様に「宇宙の入り口」での様子を中継しながらメッセージを送ることもできるからです。
「人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な一歩だ」というのは、人類で初めて月に降り立ったニール・A・アームストロング船長の第一声でした。でも、そんなにカッコのいい言葉でなくても大丈夫です。
世界初の民間人宇宙飛行士となった秋山豊寛さんのテレビカメラに向けての第一声が「これ、本番ですか?」だったことを思いだしてください。
高度約30kmから聞こえる羽月様の声、セリフがどんなものであれ、会場でそれを聞いた多くの方は、上空の星々をみつめながら感動の涙を流すでしょう。まさに、究極の上から目線です。
「オプションA」予算お見積り
①申込金…6万USドル(1ドル150円換算で900万円)
②搭乗料金…12万5,000USドル(1ドル150円換算で1,875万円)
③手配手数料…55万円
※すべて、お一人様あたりの費用。
申込金は、「乗船権」を得るためのお金で、搭乗予定日の12か月前まで返金可能です。宇宙船打ち上げは米国フロリダ州にあるケネディ宇宙センターでおこなわれますが、現地までの航空券や滞在ホテル、送迎の手配は別途必要となります。日本のご予約窓口としては、株式会社エイチ・アイ・エスの子会社で、上質な旅を提供する株式会社クオリタまでお問い合わせください。
──以上、オプションAのお見積りでした。
<スペースシップ・ネプチューン専用窓口>
クオリタ:新宿店
住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷 5-33-8 サウスゲート新宿ビル1F
電話番号:050-1746-3879
URL:公式HP/スペースシップ・ネプチューン専用HP
オプションB──「宇宙葬」を生前予約死後、星になることで“本葬”を盛り上げる
オプションBは、やがてやってくる“本葬”を、生前葬の会葬者の皆様に、よりリアルに感じてもらうための選択肢です。故人の遺灰などを収めたカプセルをロケットに載せて宇宙空間に打ち上げる、散骨の一形態「宇宙葬」の生前予約をおこなうというものです。
この分野で豊富な打ち上げ実績を誇る米国「セレスティス社」の正規代理店をつとめる株式会社銀河ステージが提供する「スペースメモリアルⓇ」のプランは以下のとおり。
宇宙飛行プラン…66万円(税込)
ご遺灰を収めたカプセルをロケットに搭載し、宇宙空間へと打ち上げるプランです。ここでいう宇宙空間とは、国際航空連盟やアメリカ航空宇宙局(NASA)が定義するカーマンライン(海抜高度100 km)を超えた領域を指します。
宇宙探検プラン…275万円(税込)
ご遺灰を収めたカプセルを宇宙帆船(深宇宙探査機)に搭載して、宇宙空間へと打ち上げるプランです。宇宙帆船は、宇宙の果てを目指していつまでも飛び続けます。次回の宇宙探検プランは宇宙帆船「サンジャマー」を使用する予定です。
月旅行プラン…275万円(税込)
アメリカ航空宇宙局(NASA)の協力で、1999年よりおこなっているプランです。カプセルをロケットに搭載して月面までお運び致します。
中でも私、余生充実郎が強く、強くおすすめしたいのが次の4つ目のプランです。
人工衛星プラン…148万5,000円(税込)
ご遺灰を収めたカプセルを人工衛星に搭載して宇宙空間へと打ち上げるプランです。人工衛星は、宇宙空間到達後、最長で240年間にわたって軌道上を周回します。
これまでに打ち上げられた人工衛星には、宇宙飛行士ゴードン・クーパー氏、「スタートレック」で機関長役を演じたジェームス・ドゥーアン氏をはじめ、世界各国約320名のご遺灰が搭載されています
この人工衛星プランの素晴らしいところは、地球の周回軌道に乗っている人工衛星の現在位置を「Star Walk」というアプリを使えばPCやスマートフォン、タブレットからいつでも確認できるという点にあります。
まさに、死後、星になった私を最長240年間にわたって地上の人たちに示すことができるのです。友人、知人や遺族たちは、アプリで現在位置を確かめながら星空を眺めるだけで、立派な「お墓参り」になる、というわけです。
スペースメモリアルを生前予約した特典として、購入者のお名前が記載されている記念品3種類(楯、カード、チケット)が申し込みから約1か月後に届きます。なお、生前予約料は5万5千円でございます。ぜひとも生前葬をこれらのお披露目の場としてほしいと思います。
お仲間たちに対するギャフンに次ぐギャフンの趣向です。
「オプションB」予算お見積り
人工衛星プランの費用は、「標準クラス・シングル(1g)」の148万5,000円(税込)が基本になりますが、カプセルのサイズによって以下のプランを選ぶことができます。
①標準クラス・シングル(1g) 148万5,000円(税込)
②標準クラス・ツイン(2g) 222万7,500円(税込)
③ファーストクラス・シングル(3g) 297万円(税込)
④ファーストクラス・ツイン(7g) 445万5,000円(税込)
ちなみにこれは、2023年9月現在の換算です。為替が大きく変動した場合は、価格が変わることがあります。
──以上、オプションBのお見積りでした。
「スペース生前葬」お見積りまとめ
基本コース「プラネタリウムBAR」でのプライベート生前葬
約26万円
※会場費、飲食費を含む。
※宇宙服のレンタル料(3万~25万円)は別途。
オプションA
「スペースバルーン」による宇宙体験
約2,830万円
※申込金、搭乗料金、手配手数料を含む。
※クオリタによるケネディ宇宙センターでまでの送迎料は別途。
オプションB
「宇宙葬」を生前予約
154万
※人工衛星プラン「標準クラス・シングル(1g)」と生前予約料を含む。
※カプセルを「ファーストクラス・ツイン(7g)」にすれば、445万5,000円に。
今回の妄想♡生前葬プランのお見積り総額は……
基本コース + オプションA + オプションBで
=合計3,001万円!
※最低料金総額(別途料金含まず)
依頼人からのコメント
正直なところ、私は驚いてるんです。できるもんじゃないって思ってたんですよ。宇宙をテーマにした生前葬なんて荒唐無稽な話。だから、余生さんが完璧なプランを提案されて、我が身を疑いました。でも、やろうと思えばできるんですね。夢のような生前葬が。基本プランはもちろん、オプションAもオプションBも、前向きに検討させていただきますよ。
専門家からのコメント
(株式会社ハウスボートクラブ)
スペースシップでの宇宙体験プランはとっても夢があります!生前葬で宇宙中継するほか、宇宙でメッセージ動画を撮っておき、実際に亡くなったときに公開するのも良いサプライズではないでしょうか。「あいつは死んだんじゃない、宇宙にいるんだ」と思わせれば、きっとサークル内の誰よりも宇宙に近い存在になれますね。
余生充実郎のひとりごと──「お見積り」を終えて
余生充実郎は愛車アルファ・ロメオに乗って、フリーウェイを北に向かって走らせていた。次の生前葬のリサーチのためであるが、今回の宇宙をテーマにした生前葬のプレゼンの興奮を冷ますためでもあった。余生は独断的にみられることが多かったが、基本的には謙虚な男である。彼は頭の中で、今回のプレゼンについて、自問自答を繰り返していた。
「実業家の前澤友作氏は、ISSに滞在するために50億円をかけたっていうじゃないか。なぁ、余生よ。今回もそれくらい強気の見積りをしてもよかったのではないか? いや、それはあまりに現実的じゃない。大風呂敷を広げすぎるのが俺の悪いところだ。だが、現実って一体、なんだ? その先に、夢はあるのか?」
その日の彼の自問自答は、終わりなき道のりをたどって宇宙に向かって舞っているかのようだった──。