妄想Case4:キッチン生前葬~YouTubeフォロワー10万人から先着40名を一カ所に集めて一緒に料理したい!

依頼人・佐藤恵美氏からのリクエスト

(今回の依頼人プロフィール)

氏名:佐藤恵美
年齢:78歳
住所:愛知県在住
家族構成:長男(50歳)、長男の妻(48歳)、孫(16歳)

実はね、こう見えてわたし、YouTuberなのよ。孫がうれしいことに、お婆ちゃん子でね、「料理を教えてほしい」と頼んでくれて、一緒に作る機会が増えたの。

わたし、息子が産まれる前は、料理教室の講師をしていて、料理の腕には自信があるのよ。いつものように孫に料理を教えていたある日、その様子を録画した動画を孫がYouTubeにアップしたらしいの。わたしに内緒でね。

それが一度だけじゃなくて、二度、三度……。孫がわたしにそのことを打ちあけたときは、10本くらい動画があがってたんじゃないかしら。

でも、そのときチャンネル登録をしてくれたフォロワーさんが1万人もいるって聞いて、わたしのやる気に火がついたの。

その努力が実を結び、半年でフォロワーさんが10万人を超えました。YouTubeから銀の楯が届いたときは孫と抱き合って、一緒に嬉し涙を流したわ。

だから、フォロワーのみなさん、それから、わたしの動画を見てくださっている方々には、本当に感謝しているの。生前葬に興味を持ったのは、その感謝を形にしたかったから。10万人のフォロワーさんから募って先着40人さんにわたしの料理をふるまいたい。

でも、そんなこと、本当にできるのかしら?

できれば、わたしひとりで料理を作るんじゃなく、YouTubeでわたしの料理を試してくれたフォロワーさんと一緒に料理を作って、それをみんなで食べる会にしたい。

でも、そんなこと、本当にできるのかしら?

そもそも、生前葬とは

生前葬ってなに?

かつては、「お世話になった人たちにお別れを言うため、本人が生きている間におこなうプレ葬儀」の総称でした。現在は、元気なうちに「人生に区切りをつけるお祝いの儀式」としておこなうケースが増えています。意味合いは、誕生日会や長寿のお祝い(喜寿や米寿など)と似ています。宗派・宗旨に関わらず自由なスタイルで開催できる点が魅力です。

あわせて読みたい:生前葬をすると人生はどう変わる?

生前葬をするメリットは?

生前葬は、これまでの人生を振り返ることで、負の感情や記憶をリセットし、それからの人生をより生き生きとしたものに変えるきっかけになります。自分が主役になって、普段聞けない感謝の言葉や褒め言葉・お祝いのメッセージをもらうことで、自己肯定感を高めることができたと感じられた方もいらっしゃいます。

あわせて読みたい:生前葬をお考えの方へ

基本プラン──老舗料理教室のキッチンを舞台に参加者40名が腕によりをかけて調理三昧

生前葬コーディネイターの余生充実郎よせいじゅうじつろうです。まずは佐藤様のご希望(潜在意識下のご希望も含め)を把握、検討した上で、基本プランから紹介させていただきます。

プラン要件
  • You Tubeのフォロワーさんと一緒に料理がしたい
  • フォロワーさんへの感謝の気持ちを伝えたい
  • 生前葬の様子の動画もたくさんの人に見て欲しい

40名という規模の料理イベントを開催する場合、まず最初に意識しなければならないのが、会場選びです。

たくさんの料理を調理するだけの充分な設備はあるのか? 公共交通機関からのアクセスが良く、多くの人が集まることができるのか? そして何より、衛生環境への配慮はしっかりしているのか? ということが重要になってきます。

日ごろから大人数での調理が行われている場所──というと、大宴会場を抱える一流ホテルのレストランの厨房などが思い浮かびますが、そういう場所を貸切で提供しているケースは皆無と言っていいでしょう。

そこでお薦めしたいのが、料理教室のレンタルサービスを利用すること。例えば、佐藤様の地元の愛知県には、60年以上にわたる歴史と伝統のある「東邦ガス料理教室」があります。

名古屋市中区栄のほか、今池、岡崎、豊田、刈谷地区に計5つの教室を展開しており、いずれの教室もレンタルスペースとして貸し出しています。

例えば、下の写真は「クッキングサロン栄」(名古屋市中区栄3-15-33栄瓦斯ビル6階)のCスタジオです。

Cスタジオは定員8名、調理台が1台、コンロが2つついたコンパクトな教室です。

料理教室がどんなところか知りたい人のための「体験レッスン」や、講師がマンツーマンで短期間での上達を支援する「プライベートレッスン」などの講座で使用されているほか、テレビの撮影や、料理写真の撮影などにも使用されています。

1日(10時間)の貸出費用は、平日5万2800円、土日祝6万3360円です。

上の写真は、「クッキングサロン栄」のA教室です。定員24名で、生徒さん用の調理台6台がズラリと並ぶメイン教室です。調理台1台につき、ガスコンロが2つ、ファンヒーター付きのコンベクションオーブン兼電子レンジが2つ完備していて、シンクには水栓が2つついています。

このA教室では、家庭料理、パン、お菓子、こどもクッキングをはじめ、レストランのシェフを講師にした本格派コースなど、幅広い講座が開催されています。

1日(10時間)の貸出費用は、平日15万1800円、土日祝18万2160円です。

ところで、A教室の定員は24名だから、フォロワー40人を招いての生前葬には小さすぎるのではないかとご心配かもしれませんが、ご安心ください。

A教室の隣にはB教室が隣接していますが、仕切りを取り払えば定員44名の「AB教室」として使用することが可能なのです。

上の写真が、B教室です。A教室と同じ程度の設備を持ち、仕切りをとるだけで規模が倍に増大するというわけです。

この最大のAB教室の1日(10時間)の貸出費用は、平日24万9480円、土日祝29万9200円です。

というわけで、基本プランのお見積もりです。

「基本プラン」予算お見積り

クッキングサロン栄 AB教室
計…24万9,480円
※平日(10時間)貸出費用

前述の通り、土日祝の1日(10時間)の貸出費用は29万9200円になります。なお、半日(4.5時間)での申込みにも対応しており、貸出費用は平日12万4740円、土日祝14万9600円になります。

佐藤様の生前葬では必要ではないでしょうが、講師や調理アシスタントの依頼も別途に依頼することができます。

──以上、基本プランのお見積もりでした。続いては、オプションAの提案に参りましょう。

オプションA──夢の「一頭買い」で鹿児島黒毛和牛のフルコースを贅沢に調理し放題

「オプションA」予算お見積り

続いての提案は、和牛の「一頭買い」です。

近年、こだわりの精肉店や焼肉店が「一頭買い」の4文字をデカデカと看板に掲げているのをよく目にするようになりました。

通常、精肉というのは加工場で部位ごとに分けられた「パーツ買い」をするのが一般的ですが、「一頭買い」はそれらをまとめて購入するところに大きな特徴があります。

サーロインやロースなどの王道はもちろん、シャトーブリアン(腰椎に沿ったヒレ肉の中心部分)、イチボ(お尻のあたりにある赤身肉)といった希少部位、それからウデやスネといった味わい深い部位まで、農家からダイレクトに仕入れることで、その牛がどこで生まれ、どこで育ち、どんな水やエサ食べたのか、誰が育てたのかといったストーリーも味わうことができるのです。

そこで紹介したいのは、全国の和牛王座を決定する2022年の和牛オリンピックで肉牛の部チャンピオンとなった鹿児島黒毛和牛を飼育している、「うしの中山」の一頭買いプロジェクトです。

うしの中山 一頭買い 鹿児島黒毛和牛 | うしの中山
サーロインなどの王道から希少部位、ウデやスネといった味わい深い部位まで...。今までにない「体験」をお届け。もちろん、どのお肉も、うしの中山が日本一の技術と愛情で育てた牛たち。ストーリーとともに「食」をお楽しみいただけます。

「牛の能力を最大限に引き出す」ことを目指して、1950年の創業から変わらない伝統技法、飼養管理を継承しながら、新たな畜産の可能性にチャレンジしている「うしの中山」。

代表者の中山高司さんが特に注力して生み出した技術は肉質にこだわった飼料だったとか。人が食べることもできる高品質な原料を、研究の末生み出された方法によってブレンドされた秘伝のレシピ。

また、飼料の他にも牛へのストレスに対する研究や大学と連携してのうまみの測定といった、受け継がれた技術と現代の技術との掛け合わせるなど、さらなる技術の発展への追求を続けています。

鹿児島県の志布志と鹿屋の2拠点に牧場を持ち、鹿屋・串良農場では現在、500頭の牛を肥育。今後は「うしの中山」の黒毛和牛の素晴らしさを世界中に広めるべく、1万頭へと展開する増頭プロジェクトを進めているといいます。

そんな「うしの中山」のこだわりの鹿児島黒毛和牛を「一頭買い」して、生前葬で思う存分に料理する──。その様子を記録した動画は、きっとバズりにバズること必至でございましょう。

【オプションA】予算お見積り

うしの中山 一頭買い 鹿児島黒毛和牛
計…400万円
※税込/販売価格

購入方法はいたって簡単です。まずは、オンラインショップ、または電話で注文。指定口座に料金を振込み後、詳細を決定します。

「一頭買い」では、お肉になる前の生きている状態の牛を選ぶことができます。農場の中から気に入った牛さんを選んで、その子のお肉すべてをお送りするのです。実際に農場に来られても構いませんし、リモートや写真で牛をお選びください。

また、納品形態は、しゃぶしゃぶ用、焼肉用、すきやき用、ステーキ用など、自由に選ぶことができます。

納品まで早くても1ヵ月はかかるため、スケジュールは余裕をもって計画しましょう。なお、送料は無料となっています。

──以上、オプションAのお見積もりでした。続いて、オプションBの提案に移ります。

オプションB────オリジナルのビーフカレーをレトルト加工して参加者のおみやげに

佐藤様の生前葬の基本コンセプトは、自身のYouTubeチャンネルのフォロワーさん、および佐藤様の動画を見てくれている視聴者さんへの感謝の気持ちを伝えることです。

ならば、その感謝の証しを「オリジナルメニューのレトルト加工製品」という形にしてプレゼントする、というのはいかがでしょう?

レトルト加工製品というと、「大量に生産しないと請け負ってくれないのでは?」というイメージを持たれている方が多いのではないでしょうか?でも、安心してください。 数百個単位の小ロットでも引き受けてくれる業者は、探せばきっと見つかるのです。

はらから 宮城県柴田町の社会福祉・自立支援施設

なかでも今回、特に紹介したいのが、宮城県柴田郡柴田町にある「くりえいと柴田」です。

社会福祉法人はらから福祉会が運営する就労継続支援B型施設で、パンやお菓子のほか、オーダーに応じてレトルト製品を製造販売しているのです。

ちなみに就労継続支援B型施設とは、障害のある人に対して、雇用契約を結ばずに生産活動などの就労訓練を行うことができる事業所のこと。

障害者総合支援法という法律で定められた、国の就労支援サービスのひとつで、ここでの経験を通じて生産活動や就労に必要な知識や能力が高まった人は、雇用契約を結んで働く就労継続支援A型や一般就労への移行を目指します。

この「くりえいと柴田」で製造しているパンは、学校給食にも採用されているほか、トマト風味の効いたこだわりの「ゆばトマトカレー」はパスタにもよく合うと評判で、品質・安全性の高い製品を生産しています。

オリジナルのレトルト加工食品の製造までの流れは以下の通り。

まずは、メニューのレシピと試作分の材料を「くりえいと柴田」に送付します。すると、レシピに基づいて試作し、レトルト加工した10袋の製品が届きます(材料費、送料は依頼者の負担です)。納期については、オーダーの混み具合もありますので、要相談となります。

試作品を試食し、再度の調整を依頼します。もちろん、一発オーケーなら再調整は必要あれませんが、レトルト加工をすると食感や味に変化が起こる場合があるそうで、「これでよし」と納得していただけるまで調整する必要があるのだそうです。

レトルト加工とメニューとの相性もあるようです。例えば、これまで手掛けたメニューでの成功例は、カレー、おでん、煮付け、シチュー、スープ、パスタソース、うどんやそばのたれ、丼物の具などがあるそうです。

上の写真は、試作後の製造を行う設備の一部です。

レトルト加工製品のサイズは、130×180mm。重量は200g程度。これを500パックという小ロットから請け負ってくれるのです。

また、サイズの規格や500パック以下の相談にも乗ってくれるといいます。

【オプションB】予算お見積り

試作1回(10袋) 4600円(税込) × 2回 = 9,200円
レトルトパック加工賃 500パック = 6万5,000円
計…7万4,200円

これらの費用のほかに、原材料費や送料が別途かかります。なお、レトルトパック加工賃は500パックだと1パックあたり130円になりますが、1000パックの場合は1パックあたり120円になり、加工賃は12万円に抑えることができます。

生前葬の参加者へのプレゼントで余った分は、YouTubeで宣伝して、お値打ち価格で販売することをお薦めします。こちらの趣向もきっと、バズりにバズること必至でございましょう。

「キッチン生前葬」お見積りまとめ

基本プラン
老舗料理教室のスタジオを借りて大勢で調理三昧
約24万9,480円

オプションA
鹿児島黒毛和牛
「一頭買い」で大盤振る舞い

400万円

オプションB
レトルト加工した
オリジナルメニューを贈呈&販売

7万4,200円

今回の妄想♡生前葬プランのお見積り総額は……
基本プラン + オプションA + オプションBで
=合計432万3,680円!

依頼人からのコメント
依頼人・佐藤恵美
依頼人・佐藤恵美

素敵なプランのご提案、本当にありがとうございます。お料理教室を会場にするという発想は思いつかなかったし、「和牛の一頭買い」、「レトルト食品の製造・販売」なんてアイデアには度肝を抜かれたわ。前向きに検討させていただきます。絶対にバズらせてみせるわ。

専門家からのコメント
畑山 花朱美<br>(株式会社ハウスボートクラブ)
畑山 花朱美
(株式会社ハウスボートクラブ)

「感謝を形にしたい」…そう考えると、お料理と生前葬は近いものがあると感じます。牛を一頭まるまる料理するのは大変!佐藤様とフォロワーさん40人が力を合わせて作り上げた料理は、まさに感謝の結晶ですね!

余生充実郎のひとりごと──「お見積り」を終えて

余生はその日、亡き妻との思い出の地を訪ねていた。生前の妻と毎朝歩いた散歩コースである。

まず向かったのは、季節によってさまざまな表情を見せてくれた自然公園。その風景の移り変わりを楽しみ、お互いの人生について語り合った、思い出の場所だ。

公園の散策後、近所の商店街で妻と相談しながら、その日のディナーの食材を調達するのが彼ら夫婦の日課だった。

だが余生にとって、愛する人はもう、この世にない。彼は数年ぶりに訪ずれた思い出の地で、こう自問するのだった。

「愛する妻よ、聞いてくれ。今回のクライアントの依頼を聞いた私は驚いたよ。なんと、会ったこともない、顔見知りでもない、インターネットで知り合った人たちとの集いのプロデュースをしたんだよ。人と人の絆を築く可能性は、現代において、こんなにも多様化しているんだなと感心するとともに、運命によって別れてしまった君との絆についても、あれこれ考えさせられてしまったんだ。君を救ってあげなくてゴメンよ。許してくれ……」

余生はその夜、亡き妻と暮らした思い出の地を、疲れを知らぬかのように歩き続けたのだった。