幕末期に坂本龍馬を支えた妻の”おりょう”。2人は激動の時代にも強い絆で結ばれた夫婦でした。
当時の歴史を紐解くと、龍馬は幕府の敵として暗殺されたということもあり、大々的にお葬式をするわけにいかず、速やかに、そして密かに埋葬されてしまったとのこと。
いつも一緒だった仲間や、妻のおりょうにもお別れする時間が充分になかったことが伺えます。
「龍馬さんのお別れ会を開きたいから、手伝って」
もし、おりょうからそんな依頼が来たら、Storyはどんなお別れ会を提案するでしょうか。
芳名板には、坂本龍馬の死を悼む人々の名前が書かれます。勝海舟、松平春嶽、西郷隆盛、桂小五郎、トーマス・グラバーと、幕末に活躍した人物が名を連ねます。
通常、祭壇は舞台上にあり、正面のみから見ることを想定しています。「龍馬Story」では祭壇を中央に配置し、その周囲に椅子を並べることで、故人を囲む雰囲気が生まれました。
会場の青山葬儀所は明治34年に開設。昭和49年に現在の建物に再建された歴史ある葬儀所です。しっかりとした葬儀を行うイメージがありますが、今回のように、一風変わったお別れ会もできます。
お別れ会では献花や献灯が一般的ですが、大酒飲みと言われた龍馬にはやはりお酒が似合います。ひとりひとり、祭壇の前に並べられたぐい呑みにお酒を注ぎ、手を合わせます。
「仕事が済めば山中で気楽に暮らすから、それまでに稽古しておいてくれ」と龍馬に言われ、おりょうさんが好んで弾いたという月琴。司会の朗読とともに、月琴の繊細な音色が会場に響き渡りました。
参加者全員が献酒を終え、次は献杯です。
歓談の時間が始まると、はじめて会う方同士にもかかわらず、龍馬や自身の出身地のことで大盛り上がり。
「お別れ会をして、改めて人が集う場所を作りたいと思った」「お別れ会を一括で企画してくれるなら “やろう”という人たちも増える」など、お別れ会についての話題も聞かれました。
土佐清水市で水揚げされた鯖を1匹丸々寿司にした一品。龍馬は鯖が大好きで、脱藩するまでよく好んで食べていたそうです。
炙りさばと土佐酢ジュレや、鰹のたたき、酒文化には必須の酒盗などがずらりと並びます。龍馬がいたら、喜んで食べたことでしょう。
坂本龍馬と同郷で、『龍馬奔る』を執筆した直木賞作家・山本一力さんが登壇。「プラスマイナスを考えて世の中に役立つのかを考えることなど、わずか30数年の生涯で教えてくれた」と述べ、「世の中が複雑になるほど、龍馬の志が大事になると思う」と語りました。
「身分が低いながらも小さな枠にとらわれずに、最後まで制約のない大きな未来を描き行動した龍馬が大好きです」「今の日本、龍馬だったらどんな行動をするのでしょうか」
芳名板の傍に貼られたボードには、参加者が書いた龍馬への想いが綴られています。
生花祭壇の一部は、春の苗ものできています。参加者への返礼品(土産品)としてお持ち帰りいただきました。
祭壇の花を持ち帰り、家で活け、思いを馳せるー 新しい祭壇のかたちになるかもしれません。