最期の言葉は、「いい人生だったよ。」
濃く幸せな一生を過ごせたのは、人生という旅の中で出逢ったみんなのおかげ。旅が大好きで、訪れた先々で多くの出会いがあった故人。
だからこそ、新たな旅に向かう前にありがとうと伝えたい。「お別れだけど、皆の心に残る1日にしたい」という奥様の想いから実現した、今回のお別れ会です。
祭壇は、ご夫婦の出会いのきっかけとなった海をイメージしたもの。横に飾られたパネルは、大好きなダイビングをした時の写真です。
水泡に見立てた丸いカードに、故人へのメッセージを綴ります。
「ありがとう」「よく休んでね」
故人をいたわり、思いやるような、心のこもったメッセージで溢れます。
献花ではなく、故人がダイビングをした時に集めた貝に、沖縄の泡盛「どなん」を献酒します。
「みなさまに見ていただきたいのは、貝と旅の写真に尽きます」。そんな奥様の意向を汲み、故人のために、それぞれの想いを込めながら貝にお酒を注ぎます。
オープニング動画では、思い出の写真を使用したスライドショーを流します。
動画の中には大ファンだったテレサ・テンのお墓の写真も。歌を通じて海外の方とも積極的に交流をされたそうです。
15年程前から東南アジアを中心に旅をしていた故人。旅のアルバムは、いつも目に届く場所に置きたがっていたそうです。
「こんな頃もあったなあ。」写真を指差し、懐かしい気持ちに浸ります。
歓談中は、再会を喜ぶ姿、故人を偲ぶ姿、抱き合う姿など、同窓会のような雰囲気です。
式の終盤では、ご友人の方々が故人に向けたお手紙を読み上げます。すすり泣く声が聞こえ、涙を流す方も見受けられました。
最後は、奥様からのご挨拶です。
「すぐに葬儀を行わなかったことで心苦しい気持ちがありました。しかしこのような会を開くことで、主人との別れを惜しみながらも、温かく見送ることができます。ありがとうございました」
貝に注いだお酒は、会場に残った友人たちで飲み干しました。故人が海で集めた貝は、みんなで分け合って持ち帰ります。亡くなった後も故人との繋がりができました。
きっと、「よかったよ、ありがとう」と見守っていてくれていることでしょう。